[Film] 『うさぎドロップ』の感想

『うさぎドロップ』のネタバレを若干含みます。

うさぎドロップ [★★☆☆☆]

アニメ版の出来が素晴らしいため、ちょっと期待値上げすぎてたかもしれません。

序盤はほぼアニメと同じなので、おそらく原作通りなのでしょう。
ただお葬式のシーンで、「ダイキチ(松山ケンイチ)と祖父はすごい似てる」ってのを強調した演出が入るのですが ―― やりすぎ。いくらなんでもそんなわきゃないだろう。これで一気に嘘くさくなりました。
ダイキチも原作より設定若いからか、葬式の最中ずーっと仏頂面。まあ要するに親戚あまり好きじゃないんだろう、というのは後に判るけど、とぼけた感じがまるでないから単なる“無愛想な暗い男”にしか見えません。松山ケンイチ氏はお芝居巧いし、そういう風にやれって言われたからそうやってるんだろうけども。
またりん(芦田愛菜)が祖父に似てるダイキチを隠れてそっと見てるとか、何となく気になってる風な演出も入らない。立ってるだけ。親戚一同と同じく「ヘンな子だな」と思ってしまいます。そのためレイナにあの子喋れないんだよって言われての「喋れるよ」とか、誰が引き取るか → 「うち来るか?」が唐突に聞こえます。
ああ監督原作読んでないんだな、と。

コウキママ(香里奈)関係。
まずキャラがアニメ版と真逆。ケバい芸能人になってます。見た目も性格も作品の淡い雰囲気にまるで合っていません。
んで、なぜか、ダイキチではなく松山ケンイチと、コウキママではなく香里奈のダンスシーンが 2 回くらい入ります。一応心理描写という扱いではあるんだけど、これは全く必要のないシーンです。ああまたダンスっスか、とゲンナリしました。
極めつけは終盤。……なんでそういうのを入れてくるかな。せっかく「あぁ、よかったね」で終わるところだったのに台無しです。愛 = セックス直結的演出は結構ですが、子供らの居ないところでお願いします。

祖父の家に呼び出されたシーンの、あのムカつくおばちゃん。
端から「うまくいってない」と決めつけてるわ、突然ヒス起こすわ。もし何かあったとしてもあのおばちゃんには絶対に預けられないですね。
あのひとは原作に登場するのかしら? だとしたらこう言うシーンこそ真っ先にカットすべき。

コウキとりんの大冒険のシーンの、チャリの兄ちゃん。
……今の時代だと「児童が男性に声をかけられる事案が発生」になりかねないのに、勇気がありますね! でもわざわざ自転車を止めて声をかけるほど様子がおかしいと思ったのなら警察に連絡するなどすべきじゃないでしょうかどうでしょうか。まあ見るからにアホっぽいので仕方がないか。しかも連れ回しまでしてるし。
目的地への案内の際の演出は「え、ちょっと止めて、まじでやめて」本気で焦りましたな。

りん役の芦田愛菜に注目が集まってますが、コウキ役の子もなかなか。
それから、ダイキチとりんの絡みがずっとぎこちなかったです。むしろダイキチとコウキの 2 人のお芝居のほうが自然に見えました。天才子役と呼ばれる芦田愛菜を持て余したか。
つか彼、子供あんまり好きじゃなさそう。奥さんも年上だし。

[Film] 感想:映画2本

『カンフー・パンダ 2』及び
『イースターラビットのキャンディ工場』のネタバレを若干含みます。

今日から公開の CG アニメ作品を 2 本。

カンフー・パンダ 2 [★★★★☆]

マスター・タイガーさんかっけー (*゚∀゚)=3
あといかにもスピードが無さそうなポーだけど、マスター・ツルさんと組んでのフィールドを立体的に使った戦いはとても素晴らしい。
テンポの良い掛け合いやコミカルな動きなど、若い頃のジャッキー・チェンの功夫映画を彷彿とさせる仕上がり。
ストーリーラインも何となく似てます。

ポーは仲間に指示したり、またサポートを受けたりするのですが、逆にポーが仲間のサポートをというシーンはほとんどなくて。彼はどうやら“龍の戦士”という特別な戦士らしいし、設定的には正しいのかもだけど。
しかし捕まるシーンが 2 度あって、どっちも原因はポー。
ちょっと 1 人で引っかき回しすぎではあるまいか。その点、達人達のサポートを受けるに相応しい戦士であるようには見えないわけです。…… 1 作目見てれば印象違ったかしら。

ラストバトル。
過去はどうでも良い、というのはちょっと表現違う気がするけど、おそらく“捕らわれてはいけない”と言いたかったのだと推測。過去よりもいま自分は何者になりたいか、の方が重要であると。
その言葉を受けてのシェン大老の行動も実に深い。この世から戦争が無くならない理由を子供たちは知る事でしょう。

面白かったス。始まりの村のシーンでは久しぶりに泣きました。
安心の DreamWorks クォリティ。

イースターラビットのキャンディ工場 [★★★★☆]

ウサギが可愛い (*゚∀゚)=3
特にピンクベレーの 3 人!
ストーリーに全く絡んでこない上、これと言った見せ場もなかったけどね! 結局チョコでコーティングされちゃったし。

主人公、ウサギの E.B. くん。
ミュージシャンになりたい、ってのは主人公にありがちな夢だけど、ドラマーになりたいってのはかなり珍しいスね。いやこの設定はすごい良いです。ちっちゃいウサギがドラムを叩くという絵的なことや、ギターやボーカル等前めのポジションじゃないって所。これは応援したくなりますね! 頑張れ E.B. !
しかも相当巧いし。人間用に組んだドラムセットはウサギには大きすぎてペダルに足届かない = バスドラム打てない = フロアで代用 = 手だけで叩いてるのに音減ったようには聞こえない。スゲー。
一応イースターラビット職は共同ってことになるのかしら。しかしフレッドがイースターラビットとして独り立ちしたら彼にはドラマーに戻って欲しいですな。あれだけの腕なのに勿体ない。
ただちょっと ―― 個人的な好みとしては声がもう少し幼いと良かったなー。山寺さんは文句なしに巧いんだけど、巧すぎて若者っぽさがちょいと足りない気が。

もう一人の主人公、人間のフレッドくん。
冒頭からダメ人間全開でなんとも胸が締め付けられます。
彼がイースターラビットを目指すきっかけが弱い。この作品の最大のマイナスポイント。子供の頃 E.B. の父親と出会った際、そこでラストシーンに繋がる何らかのイベントがあったりすると良かったのだけど。

ヒヨコのカルロス。
E.B. の父親はもうちょっと彼に敬意を払うべきだったかなー。
彼もイースターラビットにしちゃえばいいんだ。耳生えたし。

この作品は内容よりも「ウサギ可愛い!」で終わりで良いです。
面白い、と言うより見てて楽しかったですね。さすが『怪盗グルー』を作ったスタジオです。
Disney · Pixar vs. DreamWorks vs. Illumination Entertainment 。

[Film] 『ToL』『こち亀』の感想

『ツリー・オブ・ライフ』及び
『こち亀 THE MOVIE』のネタバレを若干含みます。

再開。

ツリー・オブ・ライフ [★☆☆☆☆]

見終わった直後の感想:宇宙ヤバイ (゚Д゚)

世の中には「判る人には判る」表現物と「判る人には判る、ように見せかけた」表現物の 2 種類あって、それぞれに「判る」「判らない」と言う感想が存在します。「判る人には判る」表現物に対し「判らない」と言ってしまうと後々「判る」人に上から目線で長々とお説教されてしまい非常に厄介なのですが ―― 判らないものは判りません。

ただスゴい映画だと言うことは理解できました。賞を取ったのも頷けます。
作品の 65% はイメージ映像です。神、進化、心、祈り。
そこに登場人物の、これまた抽象的な独白が重なります。
特にスゴいのが序盤のやつ。「主よ貴方は何処にいらっしゃるのですか?」的な、おそらく内外に神を探す心理状態をイメージしているのであろう宇宙の映像が 10 分以上続きます。宇宙マジヤバイ。

その後の恐竜もヤバイ。VFX です。ジュラシック・パークです。そういうシーンが必要な作品だとは思ってなかったし不意打ちです。「なんで?」と思わず口に出してしまいました。言わんとしていることは判るけど。

あとストーリーが存在しません。
基本、成人し成功もした長男(ショーン・ペン)の短い回想と、イメージ映像で構成されてます。
頑張って解釈すれば ―― 回想内で一度は和解したものの、おそらく次男の死をきっかけにして再び父親(ブラッド・ピット)を拒絶するようになってしまった長男の悔恨か。「なぜ背を向けたのか」「あんなことを言うべきではなかった」と。謙虚で、寛容であるべきだったと。
そしてラスト、父や母や兄弟と巡り会い、ようやく赦される。

何らかの物語を期待して見にいくととんでもないことになります。
キリスト教的イメージ映像が続くので、聖書になじみの薄い日本人にはウケが悪いでしょう。
あと父親は単なる DQN です。

こち亀 THE MOVIE [★★☆☆☆]

ストーリーは悪くないと思います。王道で。
ただ、主演・香取慎吾さんの、なんとかマンガの両さんに近づけようとする悲壮なお芝居が見ててとにかく痛々しい。
ストーリーではなく、明らかにミスキャストと判ってなお、自分のファンとマンガのファンと、両者に納得してもらえるよう頑張るいち俳優の姿に涙しそうになりました。
ほんと頑張ってるんですよ。懸命にダミ声張り上げて、バカみたいな顔して。
出来ることなら報われて欲しいけど、興行的には失敗のようで……。

割り切って敢えてマンガ版に近づけないようにしたら面白くなったかも。
それはもう『こち亀』ではないけど。

気になった箇所。
・捜査本部の沢村桃子(深田恭子)の扱い。
・さらに誘拐された子の保護者が居る前で「1/5」って何考えてんの?
・この辺まで『踊る』の真似しなくても良いんじゃね? テーマ違うし。
・中川の金の持ちっぷりをもっと見せて欲しかった。
・麗子ケバくね?

良かった箇所:
・子供時代の両さん役の子は面白い。
・謝罪。

『こち亀』としてはどうしても見れないス。
下町のお巡りさんが主役の人情映画、として見れば普通。