[Film] 『SUPER 8』の感想

映画『SUPER 8』のネタバレを若干含みます。

予告編見ても何の映画かサッパリ判らなかった『SUPER 8』。
ごっぐる先生に問い合わせてみたところ、Super 8 = スーパー 8mm フィルム、と言うことらしく。
続けて公開されたより詳しい予告により、つまりアマチュア映画を撮ってる子供らが主役の作品なのだな、というところまでは理解。
あと空軍の列車が意図的に脱線させられて大爆発。コンテナから“何か”が出てくる。

SUPER 8 [★★★☆☆]

見終わった直後の感想 → ゾンビ映画おもしれー (*゚∀゚)=3
カズニック監督はきっと後に有名な映画監督になるね!
アリスもいい女優さんになりそう!

ストーリー。
まずありのまま今起こった事を話すと ―― 『SUPER 8』って言う 1 本の映画を見に行ったと思ったら、いつの間にか「子供たちのアマチュア映画製作を軸とした、親子愛や友情や初恋を盛り込んだ心温まる作品」と、「空軍の陰謀、そしてコンテナ内に存在した“何か”によるホラー、サスペンス、パニック、アクションもの」の、全く毛色の違う 2 本の映画を同時に見てました、となり。
……これ、同じ街を舞台にした 2 本の映画のミックスじゃあるまいか。
それくらいこの 2 本は絡んでない。

フィルムの空き箱やタイヤ跡が主人公達に結びついてない。
キューブ状物体について、それを“何か”が取り返しに来る事もない。勝手に飛んでった。
ラストまで“何か”とのコミュニケーションのシーンもない。
さらに言うと“何か”とコミュニケーションが取れたとは思えない。
基本的に「コンテナ内に存在した“何か”」側の登場人物である主人公のパパが、「子供たちのアマチュア映画製作」側の登場人物である主人公の危機的状況に颯爽と参上! みたいなお約束展開もない。
こっちはこっち、そっちはそっち、で淡々と進みます。
最後はさすがにがっつり絡むけど。無理矢理。

思うに、「コンテナ内に存在した“何か”」はヒューマンドラマに於ける、解決後、登場人物達が何らかの絆を感じて涙する為のトラブルの一つでしかなく、それ自体特に掘り下げる類のものではないのだけど、しかしこれはあまりにも現実離れしたトラブルであるからしっかり描写する必要があった。
その結果、“2 本の映画”になってしまったのではないか。

その他。
列車事故や市街戦や“何か”の迫力のある映像と、なんとなく懐かしい(80 年代のスピルバーグ映画を思い出す)カメラワークが同じ映画内に存在。
……個人的な感想を言うなら、これは合ってない、ような (´・ω・`)
どうやらイイ話として終わらせたいみたいだけど、それにしてはあちこち見事に爆発しすぎだし、人死にすぎ。
あとあれだけのテクノロジーを持った“何か”をそのまま返しちゃうと間違いなく報復されるよねー。いいのかしら。

いや、面白くなかった、と言うワケじゃないのです。
なんというか ―― とにかく不思議な作品でした。
合うか合わないか、実際に見て判断してもらうしかないス。
「子供たちのアマチュア映画製作」側のストーリーは非常に良い出来だし、そしてそちらがメインテーマなんだろうし、わざわざ“何か”を出す必要あったの? という根本的な疑問がどうしてもわしの頭を離れないのです。
出したかったからだ、と言われそうだけど。

[Film] 『マイ・バック・ページ』の感想

映画『マイ・バック・ページ』のネタバレを若干含みます。

1,000 円の日なので映画へゴー。
平日で、かつ TOHO 上大岡で『マイ・バック・ページ』は現在 21:50 からの上映。客はわしとあと 1 人だけ。

座席

お客さん少ないと判ってても絶対 A2 とか、最前列の一番端の席に座るわし。
一般的に最も避けたい席だし誰も来ないから気楽で良いのです。

マイ・バック・ページ [★★★★☆]

1971 年に起こった朝霞自衛官殺害事件に於ける、犯人蔵匿・証拠隠滅の罪で逮捕され執行猶予判決を受けた川本三郎氏の自伝的作品が原作。主人公・沢田(妻夫木聡)はイコール川本氏。
なので全てのセリフが重い。実際に体験した事だろうからやたら重い。

梅山(松山ケンイチ)の「俺を本物にしてくれ」「もう少しで俺達は本物になれるんですよ」がこの作品の全て。
劇中で再三、様々な人から、じゃあその本物って何だ? と問われるのだけど梅山は一度も答えない。あるときは「キミは敵か?」と恫喝し、あるときは「軽蔑しました」と逆ギレし、あるときは「大丈夫だから。お前のために世界を変えたいんだ」と耳元で囁きうやむやにして押し倒す。そこにあるのは焦りだけ。若いオトコ特有のなんだかよく判らない焦り。世界のどこかで起こってる紛争の映像を見たりすると今でも沸き起こるあのカンジ。
この薄っぺらさを、ベテランの記者達はすぐ見抜き ―― 全共闘運動をただ見てるしかできなかったと言う負い目があり、ジャーナリストとしての経験も浅く、感情移入しやすい沢田は見抜けなかった。いや信じていたかった。彼も本物になりたかったから。本物が何かも判らず。

おそらく梅山は、「爪痕を残し」さえすればあとは誰かがやってくれると思ってた。それで自動的に本物になれる。自決して他をアテにした「三島由紀夫に追いついた」と言ってる事からもそれは判る。だから“その先”を問う者は敵だった。「爪痕を残」す事が最大かつ最終的な目的なのに、何を言っているのかと。そう本気で思ってるから性質が悪い。肝心なことは他力頼り。
捕まった瞬間から保身が最優先となったので仲間を売るのも当然。
彼に詐欺師の才覚か、もしくはカリスマ性が僅かでもあったら、とちょっと考えてしまいます。
そしてそんな痛々しい男を松山ケンイチ氏好演。ほんと上手いですねこのひと。持論を語るドヤ顔と声で「ああ薄っぺらいな」と判るし。捕まってからのお芝居も見事。言ってることは無茶苦茶だけど、そこに開き直りというような印象は全くなし。嘘だけど騙そうとはしてない、っていうトーンで次から次に言葉が出てくる。

ラスト。「生きてるだけで」で沢田泣いちゃうけど、ここがもー実にイイ (*゚∀゚)=3
前フリからそういうラストになるんだろうな、と判るけど。それでもイイ。
取り繕った笑顔も、慌ててビールを流し込むところもイイ。
こちらも思わずもらい泣き。
あと「新聞がそんな偉いんですか!」を「偉いんだよ!」で一刀両断した三浦友和さんかっけー。
これが大人の社会だ! で一切の反論を許さない迫力があり。
写真を見せなかったのは最後の意地か。

実に完成度の高い作品でした。男性に特にオススメです。
もう一度くらい見てみたいけど ―― TOHO 上大岡だと 06/17 でおしまいかー。

[Film] 映画『もしドラ』の感想

以下、映画『もしドラ』のネタバレを若干含みます。

初動 1.8 億 / 316sc でどうやら苦戦中
……いやその前になんで前売りに握手券とか選挙権を付けなかったのか。それをやっても許される限られた素材でしょうに。ああもったいない。この映画の制作・宣伝責任者こそドラッカーに学ぶべき! 顧客が何を求めているか知るべき!!
そんな映画版『もしドラ』を見てきました。タダで。

もしドラ [★★☆☆☆]

2 アウト 1 塁 2 塁なのに、バッター打った瞬間ランナー走り出さない野球をわしは知らんです。走ってたら滑らなくても余裕でセーフだったよね。
あとアニメ版にもあった、2 塁埋まってるのに 1 塁ランナーのリードがやたら大きい件。あれは、野球知ってるヤツなら「は?」となる、ぶっちゃけ“意味のわからないこと”をやることで動揺と混乱を誘ってるみたい。確かに混乱しました。はい。
さらに言うと ―― エースのピッチングフォーム。重心上すぎ。見事に腕だけで投げており。膝汚れてないし。……いや、腕だけで投げて甲子園行けるんだから相当才能ある投手なのかもしれない。ああだから「このチームは強くなる」のか。高校野球なんて 90% 投手の才能で決まるもんね。
そんなエースピッチャー。決勝だったか、内角に実に良い球投げてたけど ―― あれは VFX かしら。1 球だけの。
明らかにピッチャーに打球当たってるのに全く気にしないキャッチャーも凄いスね。
もう一つ。出てくる投手ほぼ全員、モーションの途中で止まってるんだけど。これって今 OK なの? 球技大会で「投球動作止めんな」って審判だった野球部に言われた記憶あるんだけど。
バッティングも手だけで振ってる選手多く。前田さんとか、ゆうのすけとか。あとゆうのすけとか。
ゆうのすけは守備でも魅せてくれて、エラーしたあと棒立ち。ランナーの進塁状況を見るでも、ボールが逸れたときの事を考えてカバーに入るでもなし。ただボールをボケーっと追うだけ。高校まで野球やってきたヤツなのにまるでエラー慣れしてない。そんなエラー慣れしてないヤツを、一般的に一番守備の巧いヤツが担当するショートストップに置いた上、あんだけエラー繰り返されても外さない。このチーム野球の常識を打ち壊しすぎです。いのべーしょん;;

つってもまあ、わしの本職はサッカーなんでもしかしたらこれが今の高校野球のトレンドなのかもしれんですが。
個人的、見てて安心できたのキャッチャーの子と対戦相手と審判だけでした。
野球のシーンもぶつ切りぶつ切り。別々に撮って試合っぽく繋げただけ。臨場感は皆無です。

ストーリーはアニメ版とほぼ同じ。なので原作もほぼ同じなのでしょう。
ただ映画版はアニメ版と違い「夕紀(入院中のマネジ)はかなり弱ってる」という演出が入るので、唐突に思われるお涙頂戴劇にもそれほど違和感なし。唐突は唐突なんだけど。
セリフ別録りなのか、口の動きとセリフがあってないシーンが数ヶ所。
マシンの球打ってるの前田さんじゃないよね。
石塚さんと青木さんのシーン。あそこコメディ調にする必要あったの?
ラスト。前田さん全く泣いてない。その点、峰岸さんの方が芝居巧いス。
前田さんは動かないところは全く動かず、動くところはちょこまか動きすぎ。とても素人くさい。のはアイドルだから別にいいのか。
アニメ版ではよく判らなかった監督の性格。映画版ではしっかり方向付けがなされており○。

アニメ同様面白くなかったけど、見てない人に「そんな映画作るくらいなら被災地に寄付しろ」と言われるほど酷くはなかったです。映画としての体裁は整ってるし。
ただ、アニメにしろ映画にしろ、制作者が野球を知らなさすぎただけで。