[DQX][ウェディホスト部] FlowerPower

ここアストルティアでは、花 = 染料。
手持ちの装備やドルボードを好みの色に染めるため、自宅の畑で栽培したり、旅人バザーに並んでいるものを落札したり ―― 各地の花屋に出向いて購入したり。
meow_20140630_r彼女はそんな、とある花屋の店長。
オルフェア・フラワーガーデン地区 7272 丁目 2 番地、『どわおの花屋さん』。
親会社的存在である農園の社長がドワーフの男性であるから開店前“仮”でそう呼んでいたら、それがそのまま正式な店名になった。
多分、名前考えるのが面倒になったのだろう。

さて花は染料で、一部位を染め上げるのに 10 本を使う。
ので購入本数もたいてい 10 本単位になる。のだけど ―― 。
たまに。具体的には 2 ヶ月に 1 度ほど。何種類かの花を、それはもうたっくさんお買い求めになるお客さまがいらっしゃる。それこそありったけ!
この日もそうだった。ありがとうございます、と色とりどりの花に埋もれてしまい姿の見えない女性を見送りつつ、でもあんなたくさんの花を何にお使いになるのだろうなあ、とそう不思議に思っていたのだが。
ふと掲示板でその存在を知った。

ウェディホストクラブ☆PESCE AZZURRO 夏の終わりのパーティーナイト!

あ、もしかして“王子へのプレゼント”、かな……?

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きちゃった……。

来月からメギストリスにお花交換屋がオープンすると言う。となるとわたしのお店はどうなっちゃうのか。そうでなくても値下がりがずっと続いてる。このままやってて食べていけるのか。色々不安なことも最近多く。
……気付いたら店の扉のプレートをひっくり返し、制服のまま、ジュレット行きの箱舟に乗っていた。

到着したのは開店 15 分前。お店の前は、扉が開かれるのを待ちわびるたくさんの女性と、少なくない数の男性と、おそらく少ない“女性のハートを持った生物学上の男性”で鈴なり状態。
いつも白ぶちメガネ丸をかけてるけどこれは伊達、田舎育ちで目は相当良い(※1280x720 の高画質設定)ハズなのに、列の先頭が全く見えないのだ。そのかわり砂時計が見える。これは緊張から来る幻覚?
そして ―― 目に見える範囲のみんながとてもとても、とてもかわいい。凝ったドレスアップに華やかなカラーリング!
しかも、だ。……これでも花屋、そのドレスアップとカラーリングにどれだけの G が必要かだいたい判ってしまう。つまりそういう事。下世話な話だけど。

そこで現実に引き戻された。制服のわたしは、どこからどう見ても明らかに場違いだ。慌てて離脱しようとするも既に自分の後にも人が並んでる。
……人混みの中ヘタに動くと踏まれるから気を付けなさい。友達だけでのメギストリス遠征を始めて許されたプクリポの子供が大人に口酸っぱく言われる最重要注意事項。

どうにも逃げられずただ立っていると、隣に並んでいた女性が王子の最新出勤情報を手に入れたらしく、「お花を取りに帰るから詰めて」とルーラアウト。

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気付いたら自分のかばんの中にも花が入っていたのだけど(それも王子全員分)、ふとお店に来てくれるあの女性の累計購入本数を思い出す。……軽く、1,000 本以上。
す、少なかった……?

そうやってまごまごまごまごしてるうち、とうとう開店の時間に。
誰からともなく拍手が。
同族の案内役の方の誘導に従い、おそるおそる扉をくぐる。

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「お待ちしておりました、姫」
「うぇ~い!ようこそいらっしゃ~い★」
「いらっしゃいませ姫様」
「いらっしゃいませ~^^」
「王子 姫様 お帰りなさいませ!」
「姫様いらっしゃ-い!」
「お越しいただきありがとうございます!」
「姫様ようこそお越しくださいました」

楽園が待っていた。

初めてなので推しの王子さまがいるわけではない。
けど、受け答えがとても自然で心地よかったベビー氏に何となく惹かれた。
ふらふらと氏の担当する 2F に上がる。
しかしなかなか話しかけられないまま時間が過ぎる。
花を受け取ってもらって、写真をお願いするだけなのに。
さなか、いちど対象指定なしで声を出してしまい、それでせっかく出かかった勇気がまた引っ込んでしまった。やっぱりわたしはここにいてはいけないプクリポなんだ帰ろう今すぐ。

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でももう 1 度だけ頑張ってみた。田舎娘にも意地がある。ついでに今度はちゃんと対象指定も付けた。
やはり所在なく突っ立ってた野暮ったいプクリポは目立ったか、「大変お待たせしてしまい、申し訳ありませんでした」と言ってくれた。それがとても嬉しかった。

そのあとのことは実は良く覚えてない。

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思い出アルバムに写真があるから、写真を撮ってもらったのだと思う。もちろん速やかにロックする。
しかし我ながらよくそこまでお願いできたものだ、と思うが ―― おそらく氏に促されたのであろう。でないとどう考えても無理だ。……しゃ写真だなんて! ととととんでもない! そんな! わたくしめごときが! ……ででででもいいですか? ときっとそんな感じだっただろう。

22:30 になり、1F にてコールが行われると言う。夢見心地のまま 1F へ。
残念ながら背が足らず王子たちの姿は見えず(プクリポである事をこんなに呪ったことはない)、チャットウィンドウ上での確認になってしまったけど。

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ちょっと笑ってしまった。これは楽しい。
で、これまた気付いたらかばんに入ってた(店内モーモンバザーから買ったのだと思われる)エルフの飲み薬を飲もうとしたのだけど、これ、MP が Max だと飲めないんだね。今さらそんなことに気付く。

2F に戻り、ベビー氏と同じテーブルのすばる氏に頑張って声をかける。
と、さらりと書いたけどやっぱり 30 分ほどの時間をかけて。
前の人との会話・撮影が終わった、その瞬間を見極める常連さんの目はやはり、凄い。こればかりは経験か。

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すばる氏との会話はなんとか覚えてる。2 人目でちょっと余裕ができた?

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椅子にエスコートして戴いて写真撮影。
……自分の写真撮影テクニックを磨こうと強く強く思った。
それからなまじ記憶が残ってるのも考え物だな、と。

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何を言っているのか自分でもよく判らない。

この後、さすがに店をずっと閉めておくわけにもいかず、リョウ氏にお花だけお渡しして、閉店前だけど帰宅することにした。後ろ頭のだんごを引っ張られつつ。

異性と言えばこの数ヶ月、社長とコンシェルジュのドワおか、農園作業員のプクリポかとしか接してない。彼らは彼らでカッコいいのだけど、王子たちはちがうのだ。“カッコいい”のプロなのだ。帰りの箱舟の中でそんなことを考えていた。

あと、花屋として、お目当ての王子にお花を渡す時の女性の表情が忘れられない。
その時、花は、明らかに“染料”ではなかった。
心を込めたプレゼントだ。
……わたしは今までずっと勘違いをしていたのかも知れない。
わたしの売っているものは、憧れであり、感謝であり、愛であり、友情であり、そして勇気であり。そう何にだってなり得るものなのだ。
それを考えれば、お花屋交換屋のオープンなんて、取るに足らないことのように思えた。憧れを、感謝を、愛を、友情を、勇気をダウングレードして小分けする? そこにはカミサマの都合しかないではないか。わたしは何を悩んでいたのだろう。

明日も、それ以降もずっと頑張ろう!
いっしょうけんめいお花を作って、売って、まっすぐ生きて行こう。

楽園はわたしに力をくれた。

[了]

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